2013年7月2日火曜日

TBS取材〜女性アスリートの妊娠・出産とその後の競技復帰について


昨日の安藤選手の出産公表を受けて、さっそくTBSが夕方コメントを求めてやってきた。テレビカメラ付きなので、あわてて髭を剃り直して産婦人科外来でインタビューを受けた。もちろん安藤選手の妊娠経過や五輪までのトレーニング計画については知る立場にないので、一般論だけ。
 以前に比べて、多くの種目で女性アスリートに注目が集まるようになり、アスリート自身も長く競技生活を続けることに意義を見いだしやすくなっている。だから結婚や出産を経ても競技を継続したり復帰したりする女性アスリートが増えてきているのだろう。陸上やマラソンのような個人競技だけでなく、サッカーやバレーボールでも話題になった。
出産をしたからといって競技力が激変するわけではない。もちろん1〜2年のブランクがあるわけだから、一時的には競技力は低下するし、出産後1年くらいはなかなか元のアスリートの体に戻すのは難しいものだ。これは体重、体脂肪などの体組成の面もあるし。単にトレーニング時間を十分捻出できない事情が大きいだろう。また、授乳を継続すれば、緊満した乳房をかかえて敏捷性やスピード、ジャンプの高さを競うのは不利であるし、1〜2時間おきに授乳・搾乳をしなければならないと練習への集中力も損なわれる。また授乳中は骨密度も低下しやすいので、疲労骨折なども起こしやすい。出産後の早期マラソン復帰を企てたラドクリフ選手も、恥骨の疲労骨折で苦労した。だから、なかなか授乳をしながら本格的競技スポーツへの復帰というのは難しい。
また、妊娠中にどれくらいトレーニングを継続できたかも産褥の復帰に影響してくる。当然妊娠後期までトレーニングができているほど、競技力回復が早い。ただトレーニングは休止せざるをえなかったとしても、妊娠中というのは病気療養をしているのと違って、増加した体重による自重負荷や心拍出量の増加によりある種の負荷状態であるので、切迫早産で長期臥床を強いられたのでもない限り、スムーズな回復は見込める。
したがって、もし体型をすばやく競技仕様に戻せて、また犠牲を払って授乳をある程度のところで中止するならば、早期の競技復帰を果たすことはできるかもしれない。1年間のブランクといっても、それが連戦による慢性疲労からの回復、故障の治癒、新たなモチベーションにつながるならば、逆に妊娠前よりも強くなることもありうる。特にブランクによる加齢が不利となりにくい(30代で競技力のピークを迎えるような)持久系種目や技術がモノを言う種目(マラソン、ゴルフなど)にあてはまるだろう。フィギュアスケートでは前例がなく難しい競技だとは思うが、安藤選手はまだ25歳と若いし、元々の能力は素晴らしいので、どこかでやれるか注目だ。
ただし、乳幼児をかかえての競技復帰には、家族やスタッフによるサポートが絶対に必要。合宿や遠征で子供から離れる時間が長くなると、自分の競技ばかり追求していいのかと自問することにもなるだろう。育児そのものに加えてメンタルのサポートも必要になる。
こんなことをとりとめもなく喋った。

7月3日の「ひるおび」の中で、12時40分過ぎのどこかで放映されるとのことだ。

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