66%!
最近も再び疲労骨折を起こしてしまった女子長距離走選手の相談を受けた。腰椎骨密度はなんと平均値の66%にまで低下していた。これまで40人以上の女子長距離選手の骨密度を測ってきていて、70%台にはもうびっくりしなくなっているのだが、さすがにこれは史上最低の値である。
実はこの選手は以前にも68%という数値が出ていて、無月経に対するホルモン補充療法を行っていた。しかし、この半年は行ったり行わなかったりで十分な治療ができていない。
さてこれから婦人科医としてはどのようにサポートしていけばいいだろうか。これまでの経過から、ディビゲル®と用いたホルモン補充療法を行っても骨密度維持は図れても増加は難しいかもしれない。しかしこの骨密度で競技を続けさせるのもリスキーすぎる。
私がおすすめしたのは経口避妊薬(低用量ピル、OC)である。
海外の文献には、「若年アスリートの無月経に伴う骨粗鬆症は、骨吸収の増加がないという点で閉経後の骨粗鬆症とは機序が異なる。ホルモン補充療法では十分でないが、(ホルモン作用のより強い)ピルならば骨量増加を期待しうる」という意見があることは以前より承知していた。ただしアスリートの出すうえで、吐き気、食欲増加、浮腫、体重増加などの副作用が少ないOCがなかなかなく、躊躇していた。
幸い昨年11月に登場したヤーズ®はこのような副作用が軽減されている。そこで今回、このOCを開始することにした。コーチはホルモン療法にあまり賛成でないらしいが、この骨密度でSかも実際に疲労骨折を起こしているわけだから「理想」を言ってはいられない。現実的に婦人科医ができる最善と思われるサポートをしていく必要がある。
なお整形外科主治医からは活性型ビタミンD誘導体であるエディロール®が処方が開始された。ここでビスホスホネート製剤を処方しないのは、やはり骨吸収の増加が原因ではないと見抜いているからであろう。賛成である。
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