「第1世代プロゲスチンであるノルエチステロンは体内で(蛋白同化ホルモンである)ナンドロロンの代謝物の19-ノルアンドロステロンに代謝されることがあり、分析機関から違反結果と報告された場合、陽性と見なされる」。したがって、必ずドーピング検査の場合、申告が必要だと述べたつもりである。
ノルエチステロンが含まれるOCは、オーソM®、ルナベル®などである。ちなみにこの2つは全く同一の薬剤で、避妊目的の自費処方の場合はオーソM®、月経困難症に対する保険処方の場合はルナベル®を処方することになる。
もし、これらのOCをのんでいるとドーピング検査の際に申告しなかった場合、検査機関側はナンドロロンの服用と区別できるのであろうか?
答えは「区別できるので心配ない」である。
実際には、OC服用の事前の申し出の有無に関わらず、検査機関では女性の尿で19-ノルアンドロステロンが検出された場合、妊娠の有無およびノルエチステロンの他の代謝物の有無が測定される。他の代謝物が検出されれば、基本的にノルエチステロン服薬と矛盾しない結果と判断されるわけである。これは日本アンチドーピング機構(JADA)と検査機関からの回答であるから間違いない。
ところが、まだまだノルエチステロンを含むOCはできれば避けること、といった記述が各所に見られる。例えば日本薬剤師会作成の「薬剤師のためのドーピング検査ガイドブック2011年版」を見ると、「ノルエチステロンは詳しい分析により区別されるが、禁止物質と共通の代謝物が生じるため、他の薬剤を使用する方が望ましい」(58ページ)となっている。この記述はもはや根拠がないと言えよう。
これまた以前書いたように、「ノルエチステロンは代謝産物に一部がエストロゲンに転換されるという特徴があり、骨量低下が危惧される若年アスリートなどにとっては好ましい薬剤とも考えられる」。懸念がなくなった以上、今後必要に応じてオーソM®やルナベル®も取り入れていこうと思う。
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