以前の記事のコメント欄にルナベル®とヤーズ®の違いについて質問があった。
ルナベルもヤーズと同様に月経困難症に対して保険適応のあるOC(経口避妊薬)である。現時点では保険で処方できるOCはこの2種類しかない。ただしルナベルは使用されている黄体ホルモンがノルエチステロンといういわゆる第1世代プロゲスチンである点と、エチニルエストラジオール量が35μgとヤーズ(20μg)の1.75倍もある点が大きく異なる。
ルナベルは最初の保険適応OCとして2008年に発売された。ただし薬剤自体は従来から自費のOCとして処方されていたオーソMと変わらず、名称のみの変更がなされての発売だったわけだ。これは従来のOCと同様、「吐き気」「ムカムカする」「体重増加」「むくみ」などの副作用がどうしても一定頻度で起こる。印象としては3割程度の女性に起こるだろうか。もっとも、そうした副作用は際限なく続くわけではなく、飲み始めの1〜2周期に限られる場合が多いため、特段の問題なくこれまで処方されてきた。
一方のヤーズは昨年2010年の発売。含有するドロスピレノンという第4世代プロゲスチンのメリットとして「体重増加」「むくみ」の副作用頻度がほとんどなくなっている。さらにエチニルエストラジオールが少ない分、「気持ち悪さ」の頻度は圧倒的に少なくなっているようだ。僕自身が処方した中では、これまでに一人だけがムカムカ感の持続を訴えている。ただしヤーズには欠点もあって、内服中の少量不正出血の頻度はやや高いようであるし、血栓症リスクがやや高いのでは?という問題提起に対する決着もまだついていない。
肝心の排卵抑制作用、月経痛抑制作用については同等と考えられている。薬価も同一に設定された。
したがって、これまでルナベルを使用していて特段の問題がない女性にはそのまま継続していただいているし、上記の副作用軽減を希望する女性にはヤーズの内服をおすすめしている。
スポーツ選手、特に長距離ランナーは、軽量痩身のためか上記の副作用が出やすい傾向にあるようなので、ヤーズをお勧めすることにしている。国立スポーツ科学センターにも発売と同時にいち早く導入してもらっている。
ヤーズについては以前の記事(ヤーズの利点と注意点、ヤーズの血栓症リスク)も参考にしていただきたい。
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