青梅から都県境の山々を経て雲取山までのぼり一気に鴨沢まで下る60KのトレイルイベントOTKに今年も参加した。GWのイベントとしてこれだけははずせない。
快晴に恵まれた分、前半暑くてハイドレーションをじゃんじゃん消費。一杯水までに1.5リットル飲みきって、湧き水で満タンにした。ただそれ以降は標高1500m越えで水分消費は激減。何とか最後まで持った。
3回目の参加ともなると、コースの概要も、迷いやすいところもだいたいわかって、ルート探しにエネルギーを使わなくてよくなる。また昨年前半とばしすぎて、一番「走れる」蕎麦粒山〜酉谷山の区間をとぼとぼとなってしまった反省もいかして、今回は上手にまとめることができた。約60kmを10時間35分。昨年より約10分短縮。
慢性化している左アキレス腱痛が途中からだいぶ痛んだが、最後の鴨沢までの6km超の長い下りは快調に飛ばせた。この区間があるから気持ちよく終われる。
ただ、さすがにこれだけの距離と標高差を一気に走ると、アキレス腱以外にも脚じゅうにダメージがきている。当分ロボット歩きとなる予定。
2012年4月29日日曜日
2012年4月26日木曜日
読売新聞にインタビュー記事が載った
しばらく前になるが、4月3日の読売新聞朝刊に記事が載った。「WOMEN 第1部 心と体」と題した特集記事で、ロンドン五輪を控えて女子アスリートの心と体の問題を洗い直す趣旨である。その第1回が「猛練習と減量 体に異変」というタイトルがついて、前半が体操競技、後半が陸上長距離の女子選手をとりあげている。その後半に僕が登場するので紹介しておく。
過酷な体重制限と月経不順は、体操に限った問題ではない。陸上の長距離種目では以前から指摘されてきた。日本陸連の医事委員でもある埼玉医大病院産婦人科の難波聡医師はある年の世界ジュニア選手権に同行して驚いた。20歳未満の選手が参加する大会で、中長距離の女子代表8人のうち7人が、長期的に月経がない無月経の状態だった。
難波医師によると、無月経で問題なのは、ホルモンのバランスが崩れて骨密度が低い状態になることだ。そのため、骨盤などの疲労骨折を起こしやすくなる。難波医師が相談を受けた事例では、こういう選手もいた。
中学の時に初潮があっただけで、その後はなし。高校は駅伝の強豪校に入り、その間も月経はなかった。実業団に入って2年たったが、状態は変わらない。実業団では練習量が増えて、疲労骨折などの故障が増えてきた。レースにも出られず、高校時代の自己ベストを更新できずにいる−−。
難波医師が特に懸念するのは、このように成人になっても月経の周期が確立しなかった選手だ。ずっと月経がなかった選手が、果たして引退後に出産できるのか。「卵巣機能が成熟した人であれば、一時的に月経が止まっても、現役を引退すれば回復すると思う。だが、最近はそういう選手ばかりとも言えない。性成熟期を経験していない選手が、引退して月経リズムが戻ってくるのかという点が、まだよく分かっていない」
難波医師は現在、陸連強化委員会の協力を得て、元実業団選手を対象にしたアンケート調査を実施し、集計作業をすすめている。
(以上4月3日読売新聞朝刊より)
過酷な体重制限と月経不順は、体操に限った問題ではない。陸上の長距離種目では以前から指摘されてきた。日本陸連の医事委員でもある埼玉医大病院産婦人科の難波聡医師はある年の世界ジュニア選手権に同行して驚いた。20歳未満の選手が参加する大会で、中長距離の女子代表8人のうち7人が、長期的に月経がない無月経の状態だった。
難波医師によると、無月経で問題なのは、ホルモンのバランスが崩れて骨密度が低い状態になることだ。そのため、骨盤などの疲労骨折を起こしやすくなる。難波医師が相談を受けた事例では、こういう選手もいた。
中学の時に初潮があっただけで、その後はなし。高校は駅伝の強豪校に入り、その間も月経はなかった。実業団に入って2年たったが、状態は変わらない。実業団では練習量が増えて、疲労骨折などの故障が増えてきた。レースにも出られず、高校時代の自己ベストを更新できずにいる−−。
難波医師が特に懸念するのは、このように成人になっても月経の周期が確立しなかった選手だ。ずっと月経がなかった選手が、果たして引退後に出産できるのか。「卵巣機能が成熟した人であれば、一時的に月経が止まっても、現役を引退すれば回復すると思う。だが、最近はそういう選手ばかりとも言えない。性成熟期を経験していない選手が、引退して月経リズムが戻ってくるのかという点が、まだよく分かっていない」
難波医師は現在、陸連強化委員会の協力を得て、元実業団選手を対象にしたアンケート調査を実施し、集計作業をすすめている。(以上4月3日読売新聞朝刊より)
2012年4月25日水曜日
血中エストラジオール値だけではPによる消退出血の有無はわからない
無月経の女性アスリートが初診してきた場合、最初に採血をすることが多い。LH、FSH、プロラクチンなどの下垂体ホルモンに加え、必ず血中エストラジオール値を測定する。これは要するに卵巣が分泌している女性ホルモン(エストロゲン)の量を表し、だいたい無月経の「重症度」が高いほど低下すると考えてよい。
正常に月経周期が維持されている女性ではおおよそ30pg/mlから120pg/mlくらいの間で血中エストラジオール値は周期的に変動する。
一方、数年以上の長期無月経の患者や閉経後の女性では20pg/ml未満、しばしば(通常よく用いられる測定法であるEIA法の検出感度以下という意味の)10pg/ml未満となってしまう。(ちなみにこのような低濃度のエストラジオールの測定にはEIA法でなくRIA法での検査提出が望ましいのでお知りおきを)
さて、無月経の「重症度」を分類する方法として用いられてきたのは、まず黄体ホルモン(プロゲステロン製剤という意味でPと略すことがある)を投与してみて、子宮からの消退出血があるかないかを見る、というやり方だ。
ある程度卵巣からのエストロゲン分泌能力が残存していれば、子宮内膜もある程度の厚みとホルモン反応性を残しているため、P投与後に出血がある。これは「軽症」で「第一度」無月経とされる。
一方、卵巣からのエストロゲン分泌まで低下してしまっているような「重症」無月経ではP投与だけでは消退出血がおこらず、「第二度」無月経と分類される。
この第一度、第二度を分ける血中のエストラジオール値はどれくらいかというと、一説によれば32pg/mlとされている。それ以下は「低エストロゲン状態」というわけだ。
最近診察したある20歳の球技選手は、1年間の無月経で血中エストラジオール値も18pg/mlと低下していた。しかし超音波検査をしてみると子宮が(体部のみの測定で)55mmとほぼ正常に近いサイズで、子宮内膜も4mm程度の厚みでしっかりと確認できた。
これはエストラジオール値こそ低いものの黄体ホルモン(P)投与のみで消退出血がくるのではないかと予想したところ、その通り、「以前の月経並みの」消退出血があったと報告を受けた。
つまりP投与で出血があるかどうかを血中エストラジオール値のみで判断するのは難しい。もし同じ18pg/mlであっても、子宮が35mm程度と小さく(「小学生レベル」と説明している)子宮内膜がほとんど見えないほど薄ければ、おそらく消退出血はないであろう。
エストラジオール値と子宮サイズ(内膜厚み)は、血糖値とHbA1cの関係にも似ている。採血時の一瞬間の血糖値ではなく最近1〜2ヶ月の血糖値の指標となるのがHbA1cであるように、最近1〜2ヶ月のエストロゲンの効果の積分値を示すのが子宮サイズや子宮内膜の厚みであろう。これがある程度保たれていれば、Pのみで出血をおこすことができるわけだ。
どうしてP投与のみで出血させられるかをこんなに気にするかといえば、治療手段に関わるからである。Pだけで出血させられないとなると、エストロゲン(E)とPをともに投与することになるが、ときとしてこの場合にいわゆるピル(または経口避妊薬、OC)が処方されることがある。このピルがけっこうな副作用をもたらす結果、ホルモン療法自体から選手を遠ざけてしまうことがある。
ところがある程度のエストラジオール分泌が保たれていれば、ときどきPを投与するだけで子宮内膜を更新することができ、当面の子宮体癌のリスクや不正出血を回避したりすることが可能となる。
したがってスポーツ婦人科医は血中エストラジオール値だけではなく、子宮サイズや内膜の厚さなどを総合的に見て、必要十分なホルモン療法を決定していかなくてはならない。
正常に月経周期が維持されている女性ではおおよそ30pg/mlから120pg/mlくらいの間で血中エストラジオール値は周期的に変動する。
一方、数年以上の長期無月経の患者や閉経後の女性では20pg/ml未満、しばしば(通常よく用いられる測定法であるEIA法の検出感度以下という意味の)10pg/ml未満となってしまう。(ちなみにこのような低濃度のエストラジオールの測定にはEIA法でなくRIA法での検査提出が望ましいのでお知りおきを)
さて、無月経の「重症度」を分類する方法として用いられてきたのは、まず黄体ホルモン(プロゲステロン製剤という意味でPと略すことがある)を投与してみて、子宮からの消退出血があるかないかを見る、というやり方だ。
ある程度卵巣からのエストロゲン分泌能力が残存していれば、子宮内膜もある程度の厚みとホルモン反応性を残しているため、P投与後に出血がある。これは「軽症」で「第一度」無月経とされる。
一方、卵巣からのエストロゲン分泌まで低下してしまっているような「重症」無月経ではP投与だけでは消退出血がおこらず、「第二度」無月経と分類される。
この第一度、第二度を分ける血中のエストラジオール値はどれくらいかというと、一説によれば32pg/mlとされている。それ以下は「低エストロゲン状態」というわけだ。
最近診察したある20歳の球技選手は、1年間の無月経で血中エストラジオール値も18pg/mlと低下していた。しかし超音波検査をしてみると子宮が(体部のみの測定で)55mmとほぼ正常に近いサイズで、子宮内膜も4mm程度の厚みでしっかりと確認できた。
これはエストラジオール値こそ低いものの黄体ホルモン(P)投与のみで消退出血がくるのではないかと予想したところ、その通り、「以前の月経並みの」消退出血があったと報告を受けた。
つまりP投与で出血があるかどうかを血中エストラジオール値のみで判断するのは難しい。もし同じ18pg/mlであっても、子宮が35mm程度と小さく(「小学生レベル」と説明している)子宮内膜がほとんど見えないほど薄ければ、おそらく消退出血はないであろう。
エストラジオール値と子宮サイズ(内膜厚み)は、血糖値とHbA1cの関係にも似ている。採血時の一瞬間の血糖値ではなく最近1〜2ヶ月の血糖値の指標となるのがHbA1cであるように、最近1〜2ヶ月のエストロゲンの効果の積分値を示すのが子宮サイズや子宮内膜の厚みであろう。これがある程度保たれていれば、Pのみで出血をおこすことができるわけだ。
どうしてP投与のみで出血させられるかをこんなに気にするかといえば、治療手段に関わるからである。Pだけで出血させられないとなると、エストロゲン(E)とPをともに投与することになるが、ときとしてこの場合にいわゆるピル(または経口避妊薬、OC)が処方されることがある。このピルがけっこうな副作用をもたらす結果、ホルモン療法自体から選手を遠ざけてしまうことがある。
ところがある程度のエストラジオール分泌が保たれていれば、ときどきPを投与するだけで子宮内膜を更新することができ、当面の子宮体癌のリスクや不正出血を回避したりすることが可能となる。
したがってスポーツ婦人科医は血中エストラジオール値だけではなく、子宮サイズや内膜の厚さなどを総合的に見て、必要十分なホルモン療法を決定していかなくてはならない。
2012年4月24日火曜日
レプチン製剤の可能性
レプチンというホルモンが運動性無月経に関連して、面白い。
レプチンは最初に「肥満防止物質」として体内、特に脂肪組織で生成されていることが確認された。すなわち、食事を摂取して満腹になってくるとこのレプチンが分泌されて、食欲を抑える働きをする。人間が体脂肪を蓄えるとレプチンの分泌量が増えて食欲が抑えられて、人間の体重や体脂肪は一定に保たれる、そういう働きをすることがわかっていた。
このレプチン、どうやら視床下部性無月経(運動性無月経も一応ここに含まれる)の女性においてその働きが低下しているらしいことがわかってきた。そうなると無月経の女性にレプチンを投与すると無月経が治るのではないか?
実際、10人の視床下部性無月経患者にレプチンを36週間にわたって投与すると7割くらいで月経が再開する。レプチンのプラセボ(偽薬)を投与した群では3割しか再開しなかったから、有意な差がある、という結論になっている。この研究は二重盲検と呼ばれる、薬を処方する医師側も被験者側も、レプチンなのか偽薬なのかわからない状態で行われたので、結論には価値がある。
ところがこのレプチンの薬、メトレレプチンというのだが、毎日1回うたなければいけない注射薬なのだ。これを36週間も注射し続けるのだから、たいへんである。しかも体重減少の副作用がある。この研究でも50kg程度の比較的痩せ型の被験者が調査期間中に3〜4kg体重が減って、メトレレプチンの投与量を減らされたり調節を受けている。
だから視床下部性無月経の中でも神経性食思不振症(拒食症)などの患者には、危険な薬であるといえる。
ただ考えようによっては、無月経の長距離ランナーなどにとっては減量しつつ無月経が回復するとしたら、これはいいかもしれない(極端な減量はもちろん危険なので、この発想に全面的に僕が賛成しているわけではないが)。この研究では無月経回復とともに骨形成も促進する可能性が示されているから、いいことだらけ、とも言える。
(以上、Proc Natl Acad Sci U S A. 米国科学アカデミー紀要 2011 Apr 19;108(16):6585-90. )
実際アメリカでは、メトレレプチンを高度肥満に対する痩せ薬として開発が開始された。日本では武田薬品が共同開発に参加している。ところが昨年、この開発が中止された。なんでも理由は、レプチン抵抗性を示す被験者が複数現れたから、ということのようだ。このレプチン抵抗性とは、レプチンを投与しても効かなくなってしまった状態で、例えば高度肥満の人はこの状態の可能性がある。
したがって、残念ながらこのレプチンいまだ製剤化されていない。長距離ランナーに減量+無月経改善+骨量改善目的に使おうという試みもなされていない。製剤化された場合、ドーピング禁止物質リストの対象になるかどうか、議論が必要なところであろう。高度肥満でないランナーがさらなる減量による競技力向上のために使用するとなれば問題だが、無月経の治療薬とするならば、特に蛋白同化作用は示さないようなので、OKかもしれない。
もし注射薬でなく内服のレプチンが登場したら・・・あっという間に痩せ薬として広まるだろう。
レプチンは最初に「肥満防止物質」として体内、特に脂肪組織で生成されていることが確認された。すなわち、食事を摂取して満腹になってくるとこのレプチンが分泌されて、食欲を抑える働きをする。人間が体脂肪を蓄えるとレプチンの分泌量が増えて食欲が抑えられて、人間の体重や体脂肪は一定に保たれる、そういう働きをすることがわかっていた。
このレプチン、どうやら視床下部性無月経(運動性無月経も一応ここに含まれる)の女性においてその働きが低下しているらしいことがわかってきた。そうなると無月経の女性にレプチンを投与すると無月経が治るのではないか?
実際、10人の視床下部性無月経患者にレプチンを36週間にわたって投与すると7割くらいで月経が再開する。レプチンのプラセボ(偽薬)を投与した群では3割しか再開しなかったから、有意な差がある、という結論になっている。この研究は二重盲検と呼ばれる、薬を処方する医師側も被験者側も、レプチンなのか偽薬なのかわからない状態で行われたので、結論には価値がある。
ところがこのレプチンの薬、メトレレプチンというのだが、毎日1回うたなければいけない注射薬なのだ。これを36週間も注射し続けるのだから、たいへんである。しかも体重減少の副作用がある。この研究でも50kg程度の比較的痩せ型の被験者が調査期間中に3〜4kg体重が減って、メトレレプチンの投与量を減らされたり調節を受けている。
だから視床下部性無月経の中でも神経性食思不振症(拒食症)などの患者には、危険な薬であるといえる。
ただ考えようによっては、無月経の長距離ランナーなどにとっては減量しつつ無月経が回復するとしたら、これはいいかもしれない(極端な減量はもちろん危険なので、この発想に全面的に僕が賛成しているわけではないが)。この研究では無月経回復とともに骨形成も促進する可能性が示されているから、いいことだらけ、とも言える。
(以上、Proc Natl Acad Sci U S A. 米国科学アカデミー紀要 2011 Apr 19;108(16):6585-90. )
実際アメリカでは、メトレレプチンを高度肥満に対する痩せ薬として開発が開始された。日本では武田薬品が共同開発に参加している。ところが昨年、この開発が中止された。なんでも理由は、レプチン抵抗性を示す被験者が複数現れたから、ということのようだ。このレプチン抵抗性とは、レプチンを投与しても効かなくなってしまった状態で、例えば高度肥満の人はこの状態の可能性がある。
したがって、残念ながらこのレプチンいまだ製剤化されていない。長距離ランナーに減量+無月経改善+骨量改善目的に使おうという試みもなされていない。製剤化された場合、ドーピング禁止物質リストの対象になるかどうか、議論が必要なところであろう。高度肥満でないランナーがさらなる減量による競技力向上のために使用するとなれば問題だが、無月経の治療薬とするならば、特に蛋白同化作用は示さないようなので、OKかもしれない。
もし注射薬でなく内服のレプチンが登場したら・・・あっという間に痩せ薬として広まるだろう。
2012年4月23日月曜日
ノルエチステロン含有OCはもはやドーピング検査において問題とならない
以前、経口避妊薬(OC)に含まれるノルエチステロンについてこのように書いたことがある。
「第1世代プロゲスチンであるノルエチステロンは体内で(蛋白同化ホルモンである)ナンドロロンの代謝物の19-ノルアンドロステロンに代謝されることがあり、分析機関から違反結果と報告された場合、陽性と見なされる」。したがって、必ずドーピング検査の場合、申告が必要だと述べたつもりである。
ノルエチステロンが含まれるOCは、オーソM®、ルナベル®などである。ちなみにこの2つは全く同一の薬剤で、避妊目的の自費処方の場合はオーソM®、月経困難症に対する保険処方の場合はルナベル®を処方することになる。
「第1世代プロゲスチンであるノルエチステロンは体内で(蛋白同化ホルモンである)ナンドロロンの代謝物の19-ノルアンドロステロンに代謝されることがあり、分析機関から違反結果と報告された場合、陽性と見なされる」。したがって、必ずドーピング検査の場合、申告が必要だと述べたつもりである。
ノルエチステロンが含まれるOCは、オーソM®、ルナベル®などである。ちなみにこの2つは全く同一の薬剤で、避妊目的の自費処方の場合はオーソM®、月経困難症に対する保険処方の場合はルナベル®を処方することになる。
もし、これらのOCをのんでいるとドーピング検査の際に申告しなかった場合、検査機関側はナンドロロンの服用と区別できるのであろうか?
答えは「区別できるので心配ない」である。
実際には、OC服用の事前の申し出の有無に関わらず、検査機関では女性の尿で19-ノルアンドロステロンが検出された場合、妊娠の有無およびノルエチステロンの他の代謝物の有無が測定される。他の代謝物が検出されれば、基本的にノルエチステロン服薬と矛盾しない結果と判断されるわけである。これは日本アンチドーピング機構(JADA)と検査機関からの回答であるから間違いない。
ところが、まだまだノルエチステロンを含むOCはできれば避けること、といった記述が各所に見られる。例えば日本薬剤師会作成の「薬剤師のためのドーピング検査ガイドブック2011年版」を見ると、「ノルエチステロンは詳しい分析により区別されるが、禁止物質と共通の代謝物が生じるため、他の薬剤を使用する方が望ましい」(58ページ)となっている。この記述はもはや根拠がないと言えよう。
これまた以前書いたように、「ノルエチステロンは代謝産物に一部がエストロゲンに転換されるという特徴があり、骨量低下が危惧される若年アスリートなどにとっては好ましい薬剤とも考えられる」。懸念がなくなった以上、今後必要に応じてオーソM®やルナベル®も取り入れていこうと思う。
2012年3月20日火曜日
including, but not limited to ...
ドーピング禁止物質は毎年少しずつ改訂されるので、新しい禁止物質リストには目を通しておかねばならない。禁止物質リストはWADAのページからダウンロードできるので、必要があればその都度すぐ確認することができる。このProhibited Listを読むときにいつも「どういう意味だっけ?」と一瞬考えるのが、標題にあげた"including, but not limited to ..."という決まり文句だ。例えばこんな感じ。
The following classes are prohibited:
Other anti-estrogenic substances including, but not limited to:
clomiphene, cyclofenil, fulvestrant.
この条文は、clomipheneなどの物質はダメだと言っているわけでそこを間違えてはいけないのだが、直訳すると
「以下は禁止される:その他の抗エストロゲン物質、以下を含むがそれに限定されない:クロミフェン・・・」
とでもなろうか。どうしてこんな理屈っぽい言い方をするのかと思ったら、この語法は(Prohibited Listに限らず)英文の契約書や約款に良く出てくる言い回しらしい。”including"のみにしたときに、以下に続く具体例のみに制限的に解釈した裁判所がかつてあったようで、それが理由で「それだけに限定されない」と念押しするようになっているとのこと。契約社会らしい表現だ。
ちなみにここで例にあげたクロミフェンは、無月経や不妊症の治療で広く排卵誘発目的に用いられる内服薬だ。禁止物質であることを知っておいてほしい。
The following classes are prohibited:
Other anti-estrogenic substances including, but not limited to:
clomiphene, cyclofenil, fulvestrant.
この条文は、clomipheneなどの物質はダメだと言っているわけでそこを間違えてはいけないのだが、直訳すると
「以下は禁止される:その他の抗エストロゲン物質、以下を含むがそれに限定されない:クロミフェン・・・」
とでもなろうか。どうしてこんな理屈っぽい言い方をするのかと思ったら、この語法は(Prohibited Listに限らず)英文の契約書や約款に良く出てくる言い回しらしい。”including"のみにしたときに、以下に続く具体例のみに制限的に解釈した裁判所がかつてあったようで、それが理由で「それだけに限定されない」と念押しするようになっているとのこと。契約社会らしい表現だ。
ちなみにここで例にあげたクロミフェンは、無月経や不妊症の治療で広く排卵誘発目的に用いられる内服薬だ。禁止物質であることを知っておいてほしい。
2012年3月18日日曜日
京都マラソン〜必死でぎりぎりサブスリー

今年度のフルマラソンシーズンの最後のレースには記念すべき第1回の京都マラソンを選んだ。アップダウンが多いうえに河川敷の走路部分もあり、自己記録は出そうにないコースだということはわかっていたが、今シーズンはどうせ絶不調なこともあり、これを最終レースに決めた。ただしできれば2時間55分、最低でもサブスリーは達成したいと思っていた。特に3月11日という震災一周年の日。いい加減なファンランなどをしては申し訳ない。不調ながらも全力で走ることに決めていた。で、結果は2時間59分20秒でなんとかサブスリーを確保。前半は緩いアップダウンをむしろウェーブ感覚でいい調子で走れていたが、25km手前の狐坂でノックアウトされた。ここの給食所にあったのが名物の生八ッ橋。これを逃すわけにはいかない。欲張って二個同時ほおばっあところ、一瞬息できなくなったが、おかけで後半ガス欠にはならず。もちもちした食感といい甘みといい、給食には案外いいかもしれない。
このコースは確かにハードだが、天候に恵まれたこともあり、応援が途切れることなく、走っていてとても楽しかった。
スタート前の全員黙祷と、晴れ渡る平安神宮鳥居ゴールにも感動。
しかし、一番応援に感動した場所は仁和寺。山門に僧侶20人くらいが並んで、「東北共に在り」の白横断幕掲げて、大音声での声援。思わず両手を全力で振ってしまった。
しかし、一番応援に感動した場所は仁和寺。山門に僧侶20人くらいが並んで、「東北共に在り」の白横断幕掲げて、大音声での声援。思わず両手を全力で振ってしまった。
数日にTwitterに登場した仁和寺のコメントもよかった。書き写しておく。
「京都マラソン時の仁和寺僧侶の応援に、多くの方から感謝のお言葉を戴いております。有難うございます。仁和寺の僧も他の応援者と何ら変わりません。ただ、仁和寺のご本尊様と悠久の歴史が大きな力となって届いたのでしょうか?その力を何らかの形で被災者はじめ多くの方に引き継いで下されば幸甚です。」
「京都マラソン時の仁和寺僧侶の応援に、多くの方から感謝のお言葉を戴いております。有難うございます。仁和寺の僧も他の応援者と何ら変わりません。ただ、仁和寺のご本尊様と悠久の歴史が大きな力となって届いたのでしょうか?その力を何らかの形で被災者はじめ多くの方に引き継いで下されば幸甚です。」
2012年3月8日木曜日
柴原先生大躍進!〜「ランナーズ」もご一読を
大学病院勤務でありながら私以上に(?)マラソン狂いの産婦人科医がいる。自治医大教授の柴原 浩章先生だ。
平成20年(3年半前)の神戸での生殖医学会で、柴原先生がランチョンセミナーの終盤を使ってご自分のマラソンデビュー話をされたのにびっくりし終了後にご挨拶。以降、時々情報を交換させていただいている。
柴原先生、マラソンを始めてまだ4年なのに、ぐんぐんのめり込み、どんどんタイムを縮めて、昨年の青島太平洋マラソンでついにサブスリーを達成。勢いはとどまるところを知らず、今年2月の別大マラソン(写真)では2時間55分(僕は初敗北)、先日の東京マラソンでは2時間53分と、走るたびに自己記録を更新している。もはや年代別入賞の常連。僕ももう追いつかれそうである、というかもう抜かれているのではないか。今シーズンベストだけでも何とか上回るべく、京都マラソンの目標を2時間52分台に定めた。
50歳代でのこの躍進振りを支えているのは、研究熱心さと時間の上手な使い方だと思われる。日常の練習時間はもっぱら朝5時から、というからなかなか真似できない。
サブスリー達成記念に、「ランナーズ」へ投稿、どうですか?とそそのかしたら、本当に現在発売中のランナーズ4月号「Happy Running Story」に掲載されている。興味のある方はご一読を。僕も匿名の先輩産婦人科医ランナーとして登場している。
2012年3月7日水曜日
日女体大で講演〜陸上部学生にはピンと来なかった?
昨年9月のSTCIシンポジウムでご一緒した縁で、日本女子体育大学の佐伯徹郎先生にお招きいただき、陸上部全部員を相手に「女性のスポーツ医学」と題した講演を行ってきた。名門陸上部も近年は低迷気味で、全日本インカレや全日本大学駅伝への出場もかなっていない。低迷打破の起爆剤として、部員の意識を高め脳も刺激する目的で私がまず呼ばれた、ということらしい。光栄なことである。
会場へ赴くと、何と近所の第一生命陸上部の皆さんも多数おいでになっている。顔見知りの選手も何人か。何でも午前の練習予定を午後に変更してまで、講演聴講を強制(?)いただいたようだ。選手の休日を潰してしまったか?申し訳ないことである。
さて講演の内容は、
(1)長距離選手の無月経の原因と対策
(2)月経時期調節と月経随伴症対策
(3)陸上競技における「性別問題」の最新
の3部構成。体育大学生とはいえ、排卵と月経のメカニズムもよくわかっていない子達だから、と言われていて、生理学の基本から繰り返し説明したつもり。経口避妊薬(OC)の実用面のノウハウもふんだんに盛り込んだが、わかってくれただろうか。
性別問題はもちろん付録。セメンヤ事件以来、国際陸連が「高アンドロゲン女子競技者」の検査システムを整備したことを紹介したうえで、将来中高生の指導の場に出る可能性がある体育大学生にも問題意識を持ってもらい「早期発見」につなげていきたいという狙いだ。
講演後の質問が「おとな」からしか出なかったのがとても残念だった。あとで見せていただいたアンケートによれば、
・専門的知識として聞くことができてよかった。
・今日の内容で自分が困ったことはないが、女性アスリートにとって必要な知識であることを認識した。
・難しい内容もあったが、これから指導者を目指す立場として知っておかなければならないことである。
・教育現場に立ったときにきちんと指導ができるようになれると思えた。
・内容が中長距離ブロックに偏っていたような気がする。
とのことで、あまり自分の問題としては捉えてくれなかったかな?と力不足を感じた。中距離に偏っていた?それはそうかもしれない。許せよ。
佐伯先生とはその後昼食会。何と高校時代、東京都の800mで1学年違いで競り合っていた可能性があることがわかった。こうしてお互い趣味が高じて仕事となって巡り会ったのも奇縁。今後もよろしくお願いしたい。
2012年3月6日火曜日
びわ湖毎日マラソン感想〜五輪選考が難しくなっちゃった
最近は、医務員だったり自分のレースがあったり仕事が忙しかったりで、主要マラソンは後からVTRで早送りしながら見ることがほとんどだったが、久しぶりにびわ湖は最初から最後までリアルタイムでテレビ観戦できた。
当初は低温無風の好コンディションかと思われたが、降り続く小雨が結果的にレースに陰を落とす。ウェアやシューズが雨で濡れると、特に気温10℃以下の低温下では間違いなく選手の体温を奪い、体力を消耗させる。調子よく走っているときは感じないが、いったんペースダウンし始めると体温を維持するので精一杯。冷え始めた体に再度点火するのは容易なことでなくなる。したがって、ペースダウンしながらも何とか持ちこたえて粘る、というレースはなかなかしにくい。へばるととことん落ちる。エネルギーを燃焼させ続け、ラストへ向けてビルドアップ気味に上げていけた者が最後に笑う、実際にそんな展開となった。
さてこれで五輪選考が難しくなった。もちろん藤原選手と山本選手は決まり。問題は3人目。巷では中本選手と前田選手(九電工)の争いで、中本選手有利、大穴は川内選手ということになっている。これに堀端君を加えた4人は選考レースの成績だけでも一長一短。中本選手は世界選手権で堀端選手に負けているし、前田選手は福岡で川内選手に負けているし、川内選手と堀端選手は勝負をかけた選考レースで失敗してるし…これは選ぶのが難しい。
山本選手の好きな言葉「因果応報」というのが「ざわめき」を呼んでいるが、これは否定的な意味ではなくて、野口みずき選手の名文句「走った距離は裏切らない」の言い換えではなかろうか。実際12〜2月の3ヶ月間、毎月1200kmという驚異的な練習量でびわ湖に合わせてきたという。丈夫なのが取り柄、と自分でも言っていたが、実業団の枠から飛び出た個性的な藤原選手や川内選手とは対照的に、実業団のメリットを生かした(川内選手には一日平均40km走る時間はないだろう)、もっとも実業団らしい選手が勝ったことになる。やはりマラソンへのアプローチはいろいろだ。そこがマラソンの奥深さなのだろう。
当初は低温無風の好コンディションかと思われたが、降り続く小雨が結果的にレースに陰を落とす。ウェアやシューズが雨で濡れると、特に気温10℃以下の低温下では間違いなく選手の体温を奪い、体力を消耗させる。調子よく走っているときは感じないが、いったんペースダウンし始めると体温を維持するので精一杯。冷え始めた体に再度点火するのは容易なことでなくなる。したがって、ペースダウンしながらも何とか持ちこたえて粘る、というレースはなかなかしにくい。へばるととことん落ちる。エネルギーを燃焼させ続け、ラストへ向けてビルドアップ気味に上げていけた者が最後に笑う、実際にそんな展開となった。
レースの分岐点となったのは25km。ペースメーカーが離れたと同時に、力が余っている(と錯覚した)外国人選手が一気にペースアップする。実力がついてきたことと好調とを他覚・自覚していた堀端選手(旭化成)は、外国人と勝負しないと五輪に出ても意味がない、と少々意地になっていたのではなかろうか。ペースアップに一人ただちに反応して、この時点では大器の片鱗を見せていた。やはり堀端強い、と観戦者は思ったに違いない。ところがここで無理をしたことが裏目に出る。おとなしく五輪選考に徹して日本人集団の中にとどまっていたら・・・展開は違っただろう。
これは出岐選手(青山学院大)についてもいえる。何しろ初マラソンだけに、25km地点の余裕度自覚と実際の余力とに乖離があったと思われる。マラソンの経験とはとりもなおさず、自覚余裕度から残り距離を最高効率で走りきれるペースを算出する能力アップのことだ。しかもガッツ型だけに、先頭につく余裕があるのにつかないというのは考えられなかったのだろう。出岐選手ももしも日本人集団の中で自重していたら・・・五輪は夢でなかったかも。
さて、堅実で賢い走りの中本選手(安川電機)が後方から着実に追い上げてきて日本人一位は決まった!かと思いきや(僕もそう思った)、実は無理に中本選手の追い上げにもついていかなかった、というより「無理」を終盤まで温存しておいた山本選手(佐川急便)が後方から猛追していた。1500m 3分49秒のスピードはこういうときに強い。中本選手にスパート力が全くないことは(数回見ただけの)僕でもわかっていた。あっさり競技場で逆転。最後まで「燃焼力」を温存していた山本選手の勝ち!であった。
さてこれで五輪選考が難しくなった。もちろん藤原選手と山本選手は決まり。問題は3人目。巷では中本選手と前田選手(九電工)の争いで、中本選手有利、大穴は川内選手ということになっている。これに堀端君を加えた4人は選考レースの成績だけでも一長一短。中本選手は世界選手権で堀端選手に負けているし、前田選手は福岡で川内選手に負けているし、川内選手と堀端選手は勝負をかけた選考レースで失敗してるし…これは選ぶのが難しい。
ここで、あえてこの4人が2回ずつ走ってる選考レースのうち、成績の悪い方(失敗した方)をいっさい考慮しないことを提案したい。
そうなると比較的シンプル。世界陸上7位入賞の堀端選手が、(東京6位やびわ湖5位よりも)順位的価値、(本番で入賞してくれるかもしれない)期待値とも一番高いように思うがいかが。ちなみに僕は日本陸連医事委員会に属してはいるが、選考には全く発言権がないので、完全に外野の意見である。念のため。
山本選手の好きな言葉「因果応報」というのが「ざわめき」を呼んでいるが、これは否定的な意味ではなくて、野口みずき選手の名文句「走った距離は裏切らない」の言い換えではなかろうか。実際12〜2月の3ヶ月間、毎月1200kmという驚異的な練習量でびわ湖に合わせてきたという。丈夫なのが取り柄、と自分でも言っていたが、実業団の枠から飛び出た個性的な藤原選手や川内選手とは対照的に、実業団のメリットを生かした(川内選手には一日平均40km走る時間はないだろう)、もっとも実業団らしい選手が勝ったことになる。やはりマラソンへのアプローチはいろいろだ。そこがマラソンの奥深さなのだろう。
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