2015年6月15日月曜日

無月経アスリートが使うエストロゲン製剤はどれがいい?

無月経のアスリートのホルモン(エストロゲン)補充療法を行う場合、通常、経皮剤を用いる。
これは若い人に限らず、更年期のおばさまに対するホルモン補充療法の際も、最近は経皮剤をまず選択すべし、となっているからだ。プレマリン®という以前から多く使われてきた内服エストロゲン薬もあるが、胃から吸収されてまず肝臓に流れてしまうと、脂質代謝の面などで不利な点が多いことがわかっている。しかもプレマリン®だと、採血で測定できるエストラジオール以外の成分が多く、治療効果が血液検査で判定できないという問題もある。

となると、選択肢はディビゲル®、ル・エストロジェル®、エストラーナテープ®の3種類だ。
ディビゲル®とル・エストロジェル®はジェル剤で、化粧品会社が製剤化に協力しているだけあってベタベタせずのびもよくすぐれた使用感である。ディビゲルは1日分ずつ個別包装になっているので、合宿や遠征などの携帯に便利である。ル・エストロジェル®は白いボトルに資生堂の青いマークが美しく印字されており、若い女性は化粧品感覚で使えるようである。よってアスリートの人気が高い。
ル・エストロジェル®の標準1日使用量は2プッシュであるが、あえてアスリートに1日1プッシュで用いるように指導することもある。小柄な場合、急激なエストロゲンの上昇を本人が懸念する場合(体重増加の心配が多い)などである。ただし1プッシュだと十分に血中エストラジオール濃度が上がらない印象がある。せいぜい20pg/mL程度までであろう。
したがって、特に胸の張りや帯下増量などの問題点を訴える選手以外は、標準量(2プッシュ)の方がよいと思う。特に骨密度維持が急務のアスリートに対しては。

以前は、2日間貼りっぱなしにするエストラーナテープ®は汗をかくアスリートには向いていないだろうと処方を手控えていたが、性腺機能低下症の保険病名のもと堂々と若年者に保険処方できるようになってからは、(ともすると保険査定でひっかかりやすい)ジェル剤を避けて、エストラーナテープも積極的にランナーに処方している。地域によってはジェル剤の若年者への処方が保険ではできないところもあるようだ。
実際使ってもらうと、ジェル剤よりもパッチ剤の方がエストラジオール濃度が高め安定しやすい印象があり、また懸念していたよりもアスリートの皮膚トラブルが少ないので、当面はこれを第1候補に、と考えている。

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