2012年6月28日木曜日

「脱会議」〜薄々考えていたことをズバッと書いてくれた

年に一度、4大学の産婦人科が集まって開催される研究会の幹事会が新宿で行われた。遠路はるばる1時間半以上。予定議題に関する会議時間はわずか15分程度。もはやわざわざ本研究会とは別に半年前に集まって幹事会をする意義はないのでは?と意見を出したところ、賛同を得て来年からの幹事会中止が決まった。
情報伝達と少々の打合せなら誰もがメールでできる時代。10年以上前につくられた「会則」に縛られる必要ももはやないだろう。時間の労力の節約になって、本当によかった。

ちょうどそのときリュックに入れていたのがこの本、横山信弘著「脱会議 今日からできる!仕事革命」。読み始めたのは幹事会中止を決めてからだったが、その通り、と膝をうつところの多い内容で、あっという間に読み終えた。
病院にも「ダメな」会議は多い。各科の医長を集めて院長から資料の内容を読み聞かせられる「連絡会議」はその典型。滅多に討論や話し合いになることはない、一方的な伝達。内容は配付資料を読めばわかる。今年、病棟医長をはずれてこの会議に出なくてよくなり、本当にホッとしている。
自分の科で行われているカンファレンスも見直す必要がありそうだ。会議時間は分単位で決めるべきで最長60分、という原則を超えた朝カンファ。確かに中だるみするのは否めない。時間短縮を考えてもよさそうだ。
浮いた時間とパワーを現場復帰、顧客対応に使え、とこの本にあるが、病院ならば、実際の診療の充実に当てよ、ということになる。その通りだと思う。

2012年6月24日日曜日

インフォームド・チョイス〜考え方と裏事情

学生からこんな質問を受けた。

友人の母親51歳が卵巣腫瘍で開腹手術することになりました。
腫瘍のみか、子宮卵巣卵管全摘出するか迷っているそうです。
全摘出する場合に、術後に体調異常などの影響を心配しているのですが、具体的にどのような影響がありますか?

どうやら手術を前にして術式決定における「インフォームド・チョイス」を迫られている場面のようである。こういう場合の合理的な考え方をこの医学生には知っておいてもらいたくて、ついこんな感じの長文の返信をした。


ご質問は、「腫瘍のみ摘除」と「子宮・付属器(卵巣卵管)全摘除」のどちらがいいか、ではなく、「子宮・付属器全摘除した場合の術後の体調への影響」ですね?

手術が(合併症なく)順調に終わった場合は、術後の体調への影響は、患者が閉経しているかどうかによって大きく異なるでしょう。
閉経していないのならば当然ながら術後に急激な血中エストロゲン濃度の低下がありますので、それに応じた急激な卵巣欠落症状(いわゆる更年期障害)がおこりうるでしょう。ただ同じようにエストロゲンが低下しても、症状の強さ・種類・持続期間には大きく個人差があります。Hot flushはほぼ必発として、その他どこまで症状が出るか、その場になってみないとわからない点があります。どの程度の卵巣欠落症状が出るか本人に予想させる、というのはなかなか酷なことですね。ただしこれはいずれも「そのうちおさまる症状」(可逆的な症状)ではあります。
一方すでに閉経しているのであれば、血中エストロゲンの低下「ショック」はほとんどないことになり、体調への急激な影響はないといっていいでしょう。
ここまでの話はいずれも両側「卵巣」を突然失った場合の副作用についての話です。子宮が失われることによる体調への影響はというと?・・・ほとんどない、ことになっています。
さて、不幸にして手術の合併症があった場合。子宮摘出による影響はないと書きましたが、こうした手術の合併症は、手術が大きくなればなるほど起こりやすいので、子宮摘出を含めた方が(もともと確率はそんなに高くないとはいえ)確率は増えます。例えば、尿管損傷、膀胱損傷、腸管損傷など。さらに開腹手術につきものの合併症、腸閉塞とか血栓症とか、こういうものを起こすと著しく術後の体調に影響します。しかもこれらの中には「そのうちおさまるとは限らない」不可逆な症状もありえます。例えば、仙骨付近の神経損傷による術後下肢麻痺とか・・・・(実際話を聞いたことがあります)、極端には出血多量による死亡とか・・・。
というわけで、まとめると、手術が順調に終わる限りは体調への影響はさほどない、または一時的なものである、と言えるでしょう。

で、腫瘍のみ摘除と子宮・付属器全摘除のどちらがいいか、は以上の話だけでは決められないことはおわかりですね?
なぜならそれぞれの治療法の利点とリスクを天秤にかけないといけないからです。ここまでの話は片方(または両方)の治療法の「リスク」だけの話です。利点は?
これは問題の腫瘍に悪性の可能性がどれくらい見積もられているか(悪性ならば子宮・付属器摘除が標準術式なので、その治療の「利点」が増す)、子宮にすでに異常所見があるかないか(例えば筋腫があるならばついでにとってしまうメリットがあるかも)、あるいは閉経しているかどうか、月経随伴症状が強いかどうか(閉経前で月経痛が強いならば子宮がなくなって月経がなくなるメリットが大きい)、などによって当然かわってきますので、一概にはいえません。

一般には、患者にこれらの利点とリスクを客観的にオーバービューさせるのはなかなか難しいので、医師の側がそれを代行し、どちらの治療がお勧めなのかを決めて患者に提案する、ということが行われます。これが患者の意見を訊かれているとすると・・・見積もりがちょうど拮抗しているのでしょう。拮抗していないのであればどちらかの術式が「推奨」されているはずですから。
あるいは・・・。医師側からすると、利害得失がある程度拮抗している場合、本人に決めさせておけば仮に更年期症状が強かったとか、(不幸にして)片方の術式につきものの術後合併症が起きた、という場合、「だってあなたがこっちの治療法がいいって決めたんだもん」と、はっきり本人に言わないにしても言外に匂わすことで責任を一部患者へ転嫁できる巧妙な作戦・・・とも言えるかもしれません。
従来の医師主導の治療法決定に対して(近年広まっている)インフォームド・チョイスという考え方、すなわち患者が術式を決める最終的な権利を有する、というのは総論的にはもっともなのですが、チョイスばかりに力点を置くと「結果」を全て医師が引き受けるのはしんどいので患者にも肩代わりしてもらおう、と安易な方に流れます。インフォームド・チョイスの最大の利点は、インフォーム、つまり(患者が自分でも治療法を決定できるほどの)情報提供、および決定までの思考過程の可視化に他なりません。
こんなところです。よろしいでしょうか?

2012年6月23日土曜日

日本学生個人選手権は8位に終わる

 岡部文子(2年)の出場した個人選手権を見に行ってきた。平塚の競技場は自分が学生の頃、関東インカレに出場して以来18年ぶりではなかろうか。
冬場の20kmレースでは学生2、3番の成績を残しており、第一人者の岡田選手(立教大)が不出場だけに、まずは3位以内、あわよくば優勝を、との期待をかけていた。
しかし、優勝した前田選手(立命館大)に速い飛び出しに無理してつこうとしてペースを乱し、序盤こそ2位集団をリードしたが、2回の警告を受けて完全にペースダウン。5位に下がり、1周2分かかる我慢のレースが続く。8000m過ぎに5〜8位集団に一気にかわされ9位に落ちるも、一緒に熊谷で練習する播磨選手(中大)が3回の歩型違反をとられて失格。何とか8位を確保した。
インカレに比べて涼しかったにも関わらず、49分36秒01の凡タイム。まあこの2ヶ月、解剖実習等でなかなか練習時間が確保できず、調子もジリ貧だったからやむを得ないところ。
夏休みにしっかり練習して臨めるであろう日本インカレで雪辱を果たしてほしいところである。
それにしても今日の競歩審判、最後の写真のボードの通りで警告の出しまくり。失格が6人ということは出場者の2割という異常事態である。2レーンに立って正面から見るのみで警告を出している様子に、一緒に観戦した競歩指導者達も一様に疑問を呈していた。審判によって見逃されたり厳しく取られたり、というところが走種目に比べてフェアでない、わかりにくい、すっきりしない種目という印象を与えてしまう。これもなかなか競歩に人気が出にくい所以ではなかろうか。