2011年9月30日金曜日

ポーランド・ファン

昨日の産科外来においでになった妊婦さんに付いてきた夫がポーランド人で、ポーランド・ファンを自認する私としては、妊婦さんそっちのけでその夫とポーランドの話題でお話ばっかりしていた。
というのも、2008年の世界ジュニア陸上日本チーム帯同と2010年の世界クロスカントリー日本チーム帯同で、2回もポーランド・ビドゴシチに滞在したから。乗換でワルシャワ1泊中には新旧市街を走り回って観光したし、「予習」とばかりにワイダ映画も「地下水道」「カティンの森」「大理石の男」「鉄の男」と見まくった。キシェロフスキ「ふたりのベロニカ」も見てついでにプライスナーの音楽にもはまり、「灰とダイアモンド」「パン・タデウシュ」も読み、ポーランド語の教本とCDまで買ってしまった。これだけやれば「ファン」と言ってもいいでしょう?
飛行機事故で亡くなったカチンスキ大統領の葬儀の様子をポーランド国営放送のインターネットラジオ実況で聴いていたくらいですから。
次の機会にはクラクフ、オシフェンチム(アウシュビッツ)に行きたいなあ。

ポーランド人の夫とは、「地下水道」でヴィスワ川の向こうにソ連軍が終結しているのをレジスタンスが格子越しに絶望的な面持ちで眺めるシーンの話で盛り上がりましたぞ。

2011年9月29日木曜日

月経痛のアスリートに対する処方

20歳の月経困難症の(いわゆる「生理痛がひどい」)水泳選手。月経2日前から腹痛が始まり、月経2日目までは調子ががくんと落ちるという。月経にあたったレース直後には痛みがひどくてしばらく倒れていたという。これでは予選・決勝、あるいはリレーと1日にレースを何本もこなすことはとうてい難しいだろう。
以前は月経痛の患者に対する最初の治療はまず「鎮痛薬をどんどん、もしくは適切に使うこと」であった。ロキソニン、ボルタレン(経口)、ボルタレン(座薬)などを症状のひどい数日間に集中投下するわけである。
ただ、最近の婦人科外来における月経困難症治療の第一選択肢はOC(低用量ピル)にとって替わったと言っていいだろう。もはやOCの処方目的の頻度トップは避妊ではなく、月経随伴症状(月経痛、過多月経、月経前症候群など)のコントロールになってきている。海外では(もともとOCの普及率が生殖年齢女性の30%とか50%とかいう国もあるわけで)OCを用いている選手も多いようだ(外国チームに在籍する選手からの情報)。単に周期的に内服するだけでなく、月経(OC内服中は正確には消退出血)時期をコントロールすることも可能であるため、コンディショニングの一環としてOCを常用することも可能なわけである。
さて、件の水泳選手にはヤーズ®を勧めた。月経痛の程度はよくて半分以下、悪くても2、3割はよくなるよ、と説明することにしている。
20歳そこそこでOCを服用することに抵抗を感じる向きもあろうが、特に心配はない。よく訊かれる質問だが、将来の妊孕性に影響するとは考えられない。中止すればただちに排卵は再開する。
幸い、水泳はこの時期、OFFから徐々に基礎鍛錬期に移行する時期。差し迫った重要レースがあるわけではないので、五輪イヤーを控えて新しい薬を試してみるにはうってつけの時期である。

2011年9月28日水曜日

ヤーズ®の利点と注意点

昨年11月に発売された低用量ピル(OC)「ヤーズ®」は、①(多くの副作用の原因となる)エチニルエストラジオールの含有量が20マイクログラムと従来のOCに比べて2/3程度になっている、②ドロスピレノンというプロゲスチンが軽度の利尿作用を有する、という2つの特長がある。それにより、気持ち悪さ、体の重い感じ、むくみ、体重増加、といった副作用が軽減され、特に
女性アスリートには適しているのではないかと考え、この1年間、国立スポーツ科学センター(JISS)クリニックや大学病院などで、アスリートを含む10人以上の患者に処方してきた。
確かにそういう副作用が少ないという利点は明らかである。これまでアスリートに採用してきたマーベロン®と比較しても明らかに「服用しやすい」OCであるという印象。マーベロン®も優れたOCだったが、それでも気持ち悪さを訴える患者はあった。それがヤーズ®に切り替えるとそのような症状から解放されたという。
また特に長距離ランナーは(体重が軽いせいか)そのような副作用を強く訴える傾向にあるため、よほどのことがない限り、(ホルモン補充療法は行っても)OCの処方は行わないという方針でいた。しかしヤーズ®を月経前症候群の実業団選手、重度の骨粗鬆症を有する実業団選手に内服してもらったが、ほとんど副作用を訴えることがなかった。これは「使える!」という印象である。今後は長距離ランナーの月経時期調節にも応用していけそうである。
ただしヤーズ®にも欠点がある。それは不正出血の頻度がやや高いことである。特に飲み始めの数周期、なるべく決まった時間に定期的に内服しないと、少量ではあるが出血が起こりやすいようだ。ただアスリートにとって練習、試合でのパフォーマンスに影響が出るほどの出血量ではないので、そのまま服用を続けてもらううちに徐々に出血は少なくなることがほとんどである。

2011年9月24日土曜日

AERAにちょこっとだけ登場〜あまりにも普通なコメント


少し前のAERAだが、特集「ランニングで変わる人生」の中に以前の取材が使われている。書き写すと、

エストロゲンの減少により骨量は減少するが、honeの健康にもランニングは有効だ。埼玉医科大学産科婦人科学講師の難波聡さんが話す。「運動で適度な負荷を与えることは、骨の健康にいい。さらに日の光を浴びると体内でビタミンDが合成され、カルシウムの吸収がよくなる。日焼けしない程度に、屋外で定期的に運動するといいでしょう」

これだけである。どこの保健師でも言っていそうなことなのに、何でわざわざこの程度のコメントを「埼玉医科大学産科婦人科学講師」に求めたんだろう。

2011年9月12日月曜日

熊本空港の待ち時間に俵山トレイルラン

 競歩が終わって午前の競技を観戦したら、もうそわそわ。
18時の飛行機の前に何とか阿蘇の山を走りたかったのだ。
山と高原地図を穴のあくほど見て、空港に着いてからの5時間ほどで行けるのは、空港の北東8kmほどのところにある俵山だけだと判断。
空港で着替えてタクシーで俵山峠展望所(標高700m)へ。ここから俵山頂上(標高1095m)へ一気に30分ちょっとで駆け上がる。
眺めは雄大そのもの。阿蘇内輪の方角も、有明海の方角も広く見渡せる。阿蘇は標高のわりに立木が少なく、ススキの野原が広がる平原や牧場が多いから見通しはとてもよい。
ここから林道と牧場内の道路を駆け下りて俵山交流館(標高280m)まで。
計11km、82分のトレイルだった。ちょうど空港行きのバス(1日4便)にも間に合い(間に合っていなかったらどうなっていたんだろうか、あと7km車道を走らなければならなかった?)、ちょうど飛行機にはセーフ。

2011年9月11日日曜日

日本インカレ女子10000m競歩結果


埼玉医大初の日本インカレ選手、岡部文子が3日目の最初の競技、女子10000m競歩に臨んだ。
この日の熊本は朝から強い日差し。トラック上ではあっという間に30℃を越えた。我々(岡部の指導を再開してくれている熊谷女子高の日下部先生と私)も日差しを避けて最上段で9時の競技開始を待った。

岡部は序盤から積極的な歩きで5位集団をリード。中盤は8位集団から一人抜け出して、7000mまでに9位の国士舘の選手を引き離して8位を固めたかと思いきや・・・。
ここで靴紐がほどけて結ぶために立ち止まったのが痛かった。国士舘の選手が息を吹き返し、一か八かのスパートで追ってくる状況。
それでもラスト1周の鐘が鳴ったときには、20m近くの差があったのだが・・・。
岡部もいっぱいいっぱいだった。私も国士舘が迫ってきていることを大声で伝えたつもりだったが、本人が「気づかなかった」と言っているので、責任を感じざるをえない。
結局最後の直線で逆転され、わずか5m差で9位。目標としていた入賞を目の前で逃してしまった。
ただ、2年の浪人のブランクの後、わずか半年で全国大会の入賞を争うレベルまで復活してくれたことは、よく考えたら驚異的。出来すぎとも言える。冬から鍛えてきた他の大学の選手だって負けていられないだろう。最後に急造のスタミナが切れた。
今回の悔しい思いを次の全国大会、関東インカレにぶつけてほしい。

というわけで初出場、初入賞はかなわなかったが、大健闘であった。




2011年9月9日金曜日

明日から日本インカレ(熊本)へ

埼玉医大から初のインカレ選手として岡部文子が11日(日曜日)9時の女子10000m競歩に出場する。
何しろ埼玉医大に学連登録を行う選手が出てきたのも今年が初めて。関東インカレをすっとばしてまず日本インカレが学連試合のデビュー戦というのも普通でないが、元々の能力が高いのでそれもありだろう。指導を続けてくださっている熊谷女子高の日下部先生には感謝。10000mは事実上初レースだが、8位入賞めざして頑張ってほしい。
それで陸上部の「監督」である私も、明日から熊本へ。監督として学連初試合。筑波の向井先生は新幹線で熊本入りしたようだが、私は普通に飛行機で行く予定。旧知の監督さんたちと会うのも楽しみ。
昨日の1日目の結果を見ると、男子400mの廣瀬選手(慶大)や女子10000mの吉本選手(仏教大)など、8月のユニバや世界選手権代表だった選手が、実力通り走れば軽く優勝と思われるのに力を出せていないのが目につく。疲労か、燃え尽きか。
また例年国立競技場で行われていたインカレが熊本開催となった影響か、関東の大学よりも関西以西の大学が元気なようだ。 暑いのか、長距離種目のタイムが伸びていない。

空いた時間を見つけて何とか阿蘇の山へも走りに行きたいところ。