2011年9月29日木曜日

月経痛のアスリートに対する処方

20歳の月経困難症の(いわゆる「生理痛がひどい」)水泳選手。月経2日前から腹痛が始まり、月経2日目までは調子ががくんと落ちるという。月経にあたったレース直後には痛みがひどくてしばらく倒れていたという。これでは予選・決勝、あるいはリレーと1日にレースを何本もこなすことはとうてい難しいだろう。
以前は月経痛の患者に対する最初の治療はまず「鎮痛薬をどんどん、もしくは適切に使うこと」であった。ロキソニン、ボルタレン(経口)、ボルタレン(座薬)などを症状のひどい数日間に集中投下するわけである。
ただ、最近の婦人科外来における月経困難症治療の第一選択肢はOC(低用量ピル)にとって替わったと言っていいだろう。もはやOCの処方目的の頻度トップは避妊ではなく、月経随伴症状(月経痛、過多月経、月経前症候群など)のコントロールになってきている。海外では(もともとOCの普及率が生殖年齢女性の30%とか50%とかいう国もあるわけで)OCを用いている選手も多いようだ(外国チームに在籍する選手からの情報)。単に周期的に内服するだけでなく、月経(OC内服中は正確には消退出血)時期をコントロールすることも可能であるため、コンディショニングの一環としてOCを常用することも可能なわけである。
さて、件の水泳選手にはヤーズ®を勧めた。月経痛の程度はよくて半分以下、悪くても2、3割はよくなるよ、と説明することにしている。
20歳そこそこでOCを服用することに抵抗を感じる向きもあろうが、特に心配はない。よく訊かれる質問だが、将来の妊孕性に影響するとは考えられない。中止すればただちに排卵は再開する。
幸い、水泳はこの時期、OFFから徐々に基礎鍛錬期に移行する時期。差し迫った重要レースがあるわけではないので、五輪イヤーを控えて新しい薬を試してみるにはうってつけの時期である。

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