2013年1月8日火曜日

ランニング時の低体温

今年の箱根駅伝5区で2人の選手がリタイアという異常事態があった。
実際、選手の事前の体調はどうだったか。どの地点から「おかしく」なったのか、など医学的な総括が学連の医事よりなされることを期待したいが、気象条件が問題であったことは間違いない。
前代未聞の強風が関東を吹き荒れ、箱根山中では低温+強風が選手を苦しめた。リタイアの理由は「低体温症」+「脱水」ということになっている。「脱水」の方は、調子よくゴールした選手であっても血液を採取すれば脱水気味に決まっているので、必ずしもリタイアした選手に限らない。あまり意味があるとは思われない。問題は低体温症の方である。
ランニング中にそもそも低温になることがあるのか。
通常、調子良く走っている間は低体温にはならない。筋肉で糖や脂肪などのエネルギー源を「燃焼」させながら走るからで、筋温は上昇する。
しかし、ペースダウンして「内燃機関」の活動が低下したときや、いわゆる「ガス欠」で燃焼させるエネルギーが枯渇したときは、もはや筋温の上昇はできなくなり、外気温によっては低体温になり得る
今回の箱根駅伝でも登りの間は(頑張らないと登れないので)低体温とはならなかったが、登りでエネルギーを使い果たし、最高点を過ぎてもっとも強風低温にさらされたところで、さらに下りにかかったため登りのときほど筋活動が必要なくなり筋温が低下するのと共に、倒れている
筋温が低下し始めると、もはや脚は動かなくなり、体温が維持できなくなり、「低体温症」へまっしぐらである。山の遭難事故と同様の事態であり、トムラウシでの大量遭難などが思い出される。長袖シャツに手袋、程度のウェアリングでは到底体温の維持は難しく、外部からの保温なしでの自力での回復は不可能であろう。今回両校の監督がただちに棄権を決意したのは英断であったと思われる。
こうした事態を防ぐためにウェアリングに工夫の余地はなかっただろうか。エリートロードランナーには馴染みのないスタイルではあるが、ここはトレイルランナーの知恵を借用したい。上衣には保温アンダー+ソフトシェル(最初は腰巻きスタイルでもよい)、下はロングタイツまたは「ハーフタイツ+ハイソックス」、さらにネックウォーマーにビーニーがあれば、だいぶ違ったのではないか。
さらには途中可能となった給水において、魔法瓶を用意しておいて加温した熱い飲料を手渡すという技もありえた。
もしも再びこのような過酷な気象条件となることがあるかもしれない。その場合は決して危険な低体温症によるリタイア者を出さないよう、各大学が工夫を見せてくれるに違いない。

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