2011年3月24日木曜日

女性ランナーの疲労骨折と無月経~もちろん関係ある

先日も3年近く無月経となっている実業団所属の女子長距離ランナーから相談があった。彼女は日本代表経験もあるトップランナーだが、恥骨の疲労骨折が判明してしまったとのこと。自分でも無月経との関連が気になったと見えて、「やっぱり放っておくのはよくないですか?」と質問してきた。

こういう質問には以下のように返答する。
やはり疲労骨折という「結果」を示された以上は、無月経に対する精査・治療を開始した方がいい。少なくとも今回の恥骨の故障・リハビリ期間中は。
最初に血中LH、FSH、エストラジオール値を採血により測定し、できれば骨塩量(骨密度)も測定し、そのうえで治療方針を立てることになる。
実業団入社後約3年の無月経だから、おそらくはエストラジオール値10未満の低エストロゲン状態と予想される。さらに、重症の場合にはLH・FSHも1未満に低下していて、そう簡単には「排卵-月経のリズム」は回復しないことがわかる。
こういう場合にはホルモン補充療法を開始したほうがいい。

本人にはこんな風に、信頼できる婦人科受診をすすめるのだが、さらに補足しておきたい。
特に脛骨や中足骨などよりも、「恥骨」の疲労骨折というところが、無月経との関連をうかがわせる。脚部、足部の疲労骨折は、練習量や路面、シューズなども大きく影響するだろうが、恥骨・骨盤の骨密度、疲労骨折のおきやすさはダイレクトに月経状況に関連するようだ。
それから補足の2番目。低エストロゲン状態であっても必ずしも骨密度低下を認めない選手もいる。特に大学4年間は比較的のんびりとした競技生活を送って、それから実業団入りして無月経となったような場合。22歳までに十分な"peak bone mass"が形成されているから、数年の無月経ではそう簡単には骨粗鬆症にはならない。高橋尚子選手も土佐礼子選手も大学時代から日本トップクラスのマラソン練習をしてきたわけではない。だから実業団に入って(当分は)「骨の蓄積」があるので頑張れるのではないか。

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