2012年10月1日月曜日

痔の治療薬はドーピング違反か?

痔で悩むアスリートは案外多い。ところが痔の治療薬のほとんどは、抗炎症作用を期待してステロイドが含有されている軟膏や坐薬である。例えば、外来でもっとも頻繁に処方される強力ポステリザン軟膏もネリプロクトもステロイド含有である。
ところがWADAの禁止リストでは、糖質コルチコイドの経直腸投与が(以下のように)禁止されている。


S9. GLUCOCORTICOSTEROIDS
All glucocorticosteroids are prohibited when administered by oral, intravenous, intramuscular or rectal routes. 

したがってステロイド含有「坐薬」をやめておく方がよいのはいいとして、肛門周囲へのステロイド含有「軟膏」塗布は(経直腸投与かどうか)微妙なところであるが、従来から「使用すべきでない」とアドバイスされていることが多い。
しかし一方、ステロイド含有の経皮塗布軟膏類(例えば強力ポステリザンと同じヒドロコルチゾンを含むロコイド軟膏)を湿疹や皮膚炎に用いるのはかまわないわけである。ロコイドは1グラム中ヒドロコルチゾン1mg、強力ポステリザンは2.5mgと大した違いはない(10倍、100倍のオーダーでの違いはないということを言っている)。皮膚の広い範囲に塗ればステロイド量は同じである。

禁止リストでいう経直腸投与とは(経口、経静脈、筋肉注射と並べられていることでもわかるように)、全身効果を狙っての使用法を禁じたと解釈されるから、痔疾患の治療薬までも禁止されたと反応するのは、いささか過剰自粛なのではなかろうか。
そういう疑問が湧いている。JADAの見解を尋ねてみたいところである。はっきりするまでは「自粛」でやむを得ないと思うが・・・。
実際、アスリートというだけで痔の有効な治療を受けられないのでは、気の毒だ。
ちなみに外用薬以外にも痔には漢方薬(例えば五苓散)などの治療が存在する。考慮してみていいと思う。

0 件のコメント: