2010年4月5日月曜日

「ベルリン陥落 1945」

ワルシャワからの帰途に読み始めたこの本を読み終えた。
ヴィスワ川を渡りワルシャワを占領し、東プロイセンを奪還して徐々にベルリンへ侵攻するソ連軍。ソ連軍の暴虐から逃れようと西を目指すドイツ人民。ベルリンに最後まで立てこもり次々と自死をとげるヒトラーをはじめとするナチスの幹部たち。中でも女性を襲った破壊的な性暴力を克明にしかし淡々と描いた点がこの大部の書物を衝撃的かつ説得力のあるものにしている。
しかしこの書の特徴は単に性暴力を「告発」しているわけではないところにある。例えば、特定のソ連軍将校と性関係の「契約」を結ぶことで不特定多数兵士からの性暴力を免れ物質的援助も得ていたドイツ女性が存在したことも叙しつつこのように言う。
「真相がレイプと売春の中間のどのあたりにあるにせよ、食料と保護を得るためのこういった契約は、女性を太古の、ほとんど原初の状態に戻らせた(608ページ)。」
ドイツとポーランドの間には、ナチス強制収容所、ワルシャワ蜂起のような凄絶な過去があり、ポーランドとロシアの間にも「カティンの森」のような大殺戮があり、ロシアとドイツの間にもこの書のように暴力を伴う侵攻をし合った歴史がある。現在これらの3ヶ国が接して共存していること自体が僕からすると驚異的に思える。殺戮の歴史を水に流せるわけはないと思うが、大陸で接して生きる必然なのか。

ところでこの本の「解説」が最低である。暴力と殺戮を否定しようとするスターリンはじめソ連共産党の態度を、なんと南京事件の「死者30万人」の虚偽を検証しようとする日本の識者になぞらえて共に非難するのだ。一緒にするな、といいたい。

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