2007年12月5日水曜日

Ⅳ度裂傷縫合後7日目の直腸出血 なぜ?

鉗子分娩後に会陰四度裂傷を生じてしまった症例。四度というのは膣壁の裂傷が肛門に及び、その奥の直腸粘膜面まで切れてしまっている状態だ。
この創を、会陰縫合用の2-0バイクリル・ラピッドという糸を用いて、直腸粘膜面、直腸筋層、膣壁と3層に分けて縫合した。6日間の入院中は排便もあったが特に問題なく、出血もなかった。
ところが分娩から7日目。急に肛門からの出血が始まったということで救急受診された。特に排便の直後からというわけでもなく出血の始まったきっかけははっきりしない。見ると肛門からじわーと湧いてくるように出血がある。膣内には出血はない。
肛門の外側からと膣内から圧迫止血を試みてもうまくいかない。外科当直医に肛門鏡を持ってきてもらい、見ると肛門から3cmぐらい奥の11時方向に出血点があった。おそらく縫合のいちばん奥のあたり。肛門鏡で見ながら出血点をガーゼで圧迫、直腸内2枚留置して、とりあえずは止血できた。
縫合後1週間の術後出血というのはたまに経験するところで、例えば子宮頸部円錐切除術後などでは、バイクリルが溶け始める1週間後ぐらいに再出血して外来に駆け込んで来るというのは頻繁にあることだ。
今回縫合に使ったバイクリル・ラピッドだが、ラピッド rapid というのは「急速な」という意味。溶けるのが早くて、半分の張力になるまでが5日。吸収期間は42日とされている。ちょうど張力が半分以下になった頃というわけだ。
しかし直腸粘膜面からの出血というのは初めての経験。糸がゆるむ時期といえ、なぜこんなことがおきたのか?
もともと粘膜下の動脈が切れていた?縫合時に直腸粘膜同士がきっちり合っていない個所?
ガーゼ圧迫で止血できたとして、今後問題は起きないだろうか。

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