9月から本格的に子宮外妊娠に対するMTX(メトトレキサート)治療を導入した。方法は、50mg/m2の単回投与。1週間後に血中hCG値の15%以上の低下が認められなければもう1回。従来は卵管妊娠と判明したら、原則として破裂未破裂、血中hCG値、本人希望にかかわらず手術療法(卵管切除)をおすすめしてきたわけだから、大いなる方針転換だ、というより強力なオプションの導入である。
導入に当たっては臨床検討会(CC)を私と研修医で担当し、この治療法による完遂率(hCG陰性化するか)や次回妊娠予後(卵管妊娠再発率)のデータを調べ、AOCOGのプロトコールをたたき台に議論をした。さらに卵管を温存する場合の治療法として、線状切開単独がもっとも劣り、「MTX全身投与」と「線状切開+MTX局注」がほぼ同等であるとの論文を検討した。
で、現在は卵管切除とMTX全身投与を患者に選んでもらっている。MTXを行う場合の要約(必要条件)はいくつかあるが、一応血中hCG値を5000未満としている。5000を越えていても患者の希望が強く、MTXを行った例が2例あるが、1例はhCG低下中に腹腔内出血が始まり、もう1例はhCGが上昇して胎児心拍が見え始めて、いずれも手術に移行した。
先日の四大学「臨床フォーラム」ではT医大の先生が、hCG値の基準は設けないと発言していたが、AOCOGのプロトコールでも我々の経験からも5000以上は慎重になった方がいいようだ。
またhCG値は下がっても卵管腫大や局所の血腫は半年近く残存することも多く、すぱっと患部を切除したい外科医としては、忍耐が必要である。
今後の課題は、「線状切開+MTX局注」もIRBを通して患者のオプションとして導入することと、どういうケースでMTX全身投与の成功率が高いか(逆に、うまくいかないか)を検討していくことである。
臨床フォーラムでは、MTXは過去の治療法のリバイバルであって腹腔鏡を主とすると従の治療法に過ぎないようにも言われていたが、そんなことはない、きっちりしたエビデンスを出していける治療法だろうというのが実感だ。単回投与でいくかぎり、副作用はほとんどなさそうである。ただしもちろん万能ではない。
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