最初からまわりの選手を気にせず「最後までちょうどもつぎりぎりのペース」で押していって、結果的に、残り距離と自分の余裕度の比較を間違えて大失速していたのが最近の渋井さんの失敗パターンだった。しかし、このレースで失敗するともう今後フルマラソンでの再起はありえない、くらいの背水の陣で臨んだ今回、あえて勝利のためにこの戦法を封印した。
結果的には、30km手前まで10人近くの団子状態ですすんで、そこから12kmレースとなった今回。渋井さんは残り距離に自信を持ってペースアップできている。今日くらい前半が遅くて、しかも残り距離が短いと、余裕度の方が残り距離を大きく上回るわけで、駅伝と思って押していってもゴールまでもつ。となるとしっかり練習ができていて、駅伝でも主要区間で快走している渋井さんの走力とスピードが生きるわけである。今回は渋井さんがもっとも「勝ちやすい」レース展開だった。
それにしても、これまでの自分の余裕度計測を謝りがちな渋井さんとは異なり、40km以降もさらにペースアップできていたのが驚きである。もちろん優勝するにしても、ラスト3kmくらいはジリ貧にペースダウンしてきつそうにゴールインするのでは、という予想を覆してくれた。まずは久しぶりの優勝、そして結果的に今後マラソンで勝負することをあきらめなくてすんだことにおめでとう、である。
ただ、やっぱり渋井さんは本当は「最後までちょうどもつぎりぎりのペース」で押していくスピードレースが好みのようだ。これはあくまでも世界選手権の、そして今後マラソンを続けていく「資格」を得るための勝負だったということ。
だからそんなに満足はしていない。ほっとはしているだろうけれど。
さて2位になった赤羽さん。遅れはしたが、最後まで「死ん」だり「つぶれ」たり大崩れしなかったのが立派。トラックに入ってからの再ペースアップには驚いた。今後マラソンで勝負できると思う。実業団駅伝にある程度合わせていただろうから、マラソン練習といってもまださわりだけだったはず。
このタイムなら、世界選手権代表にも選ばれる可能性が高いのではないか。
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