人為的に(主として主催者により)左右されるコンディションについても述べておく。
まずは給水の量と内容である。季節はずれの暑さに対して予定量を大きく上回る給水の需要が当日明らかになった場合は、全くもって対応困難かもしれない。しかしたとえばホノルルマラソンでは消火用の水道を給水に用いることで給水不足がおこらないようにしているというというから、参考になるだろう。
ドリンクの内容については、多くの場合協賛飲料メーカーから提供されるスポーツドリンクをそのまま供する場合がほとんどと思われる。ところが近年、各メーカーが販売に力を入れるアミノ酸飲料と称してブドウ糖をほとんど含有しないドリンクもよく用いられている。これは必ずしもレース後半のいわゆる「ガス欠」時に役立たないのである。2003年の東京国際女子マラソン「記念市民マラソン」の際も、バナナやチョコレートなどの給食はなくこのアミノ酸ドリンクが不足がちに残っているだけであった。この点も主催者としては一考の価値がある。
また、ある程度悪コンディションが予想される場合などは、特に初の参加者に対してレース前の郵送文書やホームページ上で、たとえば「例年気温は○℃くらいになる」とか「帽子の着用が望ましい」とか「多くのランナーがドリンクボトルを自ら持参している」などと、事前に目にとまるかたちで通知しておくことも有効である。
次に、交通の問題である。エリートレースでは完全交通規制が実施されるので問題にならないが、ローカルレースやウルトラマラソンではランナーに「なるべく道路の左側を通るように」注意を促しておいて同方向の車の通行をさせたままの場合がある。これはランナーからすると非常に危険を感じるところである。スピードを落とさない車もあれば、対向車とすれ違おうとしてランナーのすぐ脇をすり抜ける車もある。地元警察との協議、コース設定の工夫(一つ裏道を使うなど)により改善したい問題点である。
マラソン大会における安全管理の大部分は、ランナー自らが体調の自己把握をすること、適切な用具の準備をすること、コンディションに応じてペース配分を柔軟にすること、の3つで解決可能である。多くのランナーが手に取っているランニング専門誌を通じてこのことを啓蒙していくのが望ましい。
ただし主催者側は、全てのランナーが必ずしも上記の3つの基本を守るとは限らないという立場から、安全管理対策を講じていかねばならない。速いランナーだから安心だともいえない。一大会が終了するごとに、いわゆるヒヤリハット事例を広く集め、検証・改善につとめる地道な努力も必要であろう。
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