2009年8月6日木曜日

「エリート選手の健康診断の有用性」

陸連の医事委員長からよくIAFFの会議録だとかWADAの新規決定事項だとか理事会への提案書だとか役立ちそうな論文だとかがメール添付で送られてくる。ほとんどは「今は読んでる時間がないよ」と口の中でもごもご言いながらスルーしてしまうかまたは(後で勇気が出たときにスルーするために)Gmailの受信トレイに残しておく。
が、今朝は「片付けモード」の気分で、推薦論文を斜め読みしてみた。
IOCが「エリート選手の定期的な健康診断の有用性」について出したstatement、という特に面白味のないテーマ。そりゃあ、健康診断はいっぱいした方がいいに決まってるでしょ。特に副作用があるわけでもないし。
先日も中村俊輔選手の所属するエスパニョールのキャプテンが心臓発作で突然死した、と報道があったが、ひょっとしたらこういうリスクのある選手を事前に察知できるかもしれない。
でも、スペインのプロチームともあろうものがシーズン始めにメディカルチェックで心電図をとらない、なんてことはないだろうなあ。となると心臓突然死を防ぐと言っても限界がありそうだ。
そもそも「エリート選手」って誰のこと?JISSのメディカルチェックは、JOCの強化指定選手とか各競技団体の強化指定選手とか各国際競技会の日本代表選手とかを対象にやっているけど、ま、予算やキャパシティを考慮すると現実にはそういうことになるのかな。特にIOCが言っているのだからね。
でも本当は「インターハイや高校駅伝に燃えている高校生」とか「チームでも中位・下位の実業団駅伝選手」とかにメディカルプロブレムはかえって多いような気がする。本当は僕もJISSでエリート選手の相手だけしていないで、そういう選手の面倒も見たいんだけど。
さらにこういうメディカルチェックが選手に定着するためには、選手に「面倒くせえなあ」と思わせる義務ではなくて、メリットを感じさせなくてはいけない。
そういう意味でこのstatementの中でただ1箇所だけ目にとまったのが、
「定期的健康診断のもう一つの大事な役割は、今後継続してお世話になるかもしれないメディカルスタッフと知り合いになる機会をアスリートに提供すること」
というくだり。なるほどね。これは内科や整形外科のドクターや、ナースについて言うと確かにそう。
婦人科についても、仮に月経不順とか月経痛などの症状があっても、婦人科なんてところをわざわざ受診しようとと思い立つ選手はごく一部。メディカルチェックの一部門として気軽に面談ができて、「婦人科はそんなに恐ろしいところじゃないよ〜、話のわかるドクターもいるよ〜、気軽に相談してよ〜」とアスリートが感じれば、それは確かに意味がありそうだ。
けど、JISSでは(増えたとは言っても)婦人科の診察日は月6回だけだから毎回面談することは不可能だなあ。結局、そこのところの役割は常勤の内科の先生方に担って貰わないといけないみたい。

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