2008年2月22日金曜日
東京マラソン医務員の感想〜制限時間・テレビ中継についても
東京マラソンの日は、まず桜田門で有楽町線を7時半に下りて、仕事場所であるフィニッシュ地点の東京ビッグサイトまでマラソンコース沿いに約10kmを走って行った。朝のまだ人気(ひとけ)のない銀座や豊洲の街並みは、道路がきれいに清められているようにきれいで広々としていた。銀座や日比谷の街角にはもう揃いのコートを着た補助員が集合し始めており、思わずごくろうさんとつぶやいてしまった。
正月にこのコースを試走したときにも思ったことだが、ゆっくりjogであるにもかかわらず、築地以降の橋のアップダウンは案外脚にこたえる。終盤でこの橋の連続はしんどいだろうと思う。風は北西なので、コースは概ね追い風になりそう。昨年の冷雨の悪コンディションとは比べものにならないぐらい。
さて、医務員(救護員)の仕事だが、私はフィニッシュ地点(ゴールの直後の場所)に待機して、非常事態に備えていた。
2位の藤原新選手がゴール直後に脚をつらせて倒れたシーンでは直接触れるか触れないかぐらいまで近づいて「つったんだね?!」と大声で本人に確認の声をかけたりしたので、当然テレビに映っているかと思ったが、後で確認したら、完全に死角に入っていて全く映っていなかった。
結果的には脚がつったり膝を痛めたりでゴール直後に歩けなくなった選手を数名、直接メディカルセンター(医務室)に車いすで搬送したのみで、昨年3人出たというAEDを必要とする選手などは一人もいなかった。
多くのランニング仲間、大学の先輩・後輩などが出場しているので、見知った顔を探そうとするのだが、2時間45分以降は間をおかずにどんどんゴールしてくるので、全員をキャッチするのはなかなか困難だった。
こうして最初からフィニッシュを見ていると、2時間46分台で喜んでいる自分がまだまだ平凡だということを思い知らされたような気もして、もっと頑張らなくちゃという気になってきた。
総じて2時間40分台後半から50分台でゴールした選手は、晴れやかな達成感のある表情をしていた方々が多かったように思う。
これが3時間~3時間30分ぐらいでは、苦渋に満ちた感じの人が多く、3時間台後半から4時間台がまた充実したいい表情の人が多い、というのが大まかな傾向だった。
さすがにフィニッシュ地点待機も、夕方に近づいて日が翳ってくると寒くなってくる。時々交代しながらの仕事となった。5時間半までにおよそ2万人がフィニッシュ。このあたりまでは案外元気そうに手をふったりガッツポーズをしながらゴールインしてくる人が多い。
ところが6時間を超えると、多くが歩きながらのゴールインになる。しかも脚をひきずったり、明らかにバランスを崩しながらやっとたどりついたという感じの人がまじり始める。
医務室に最後まで残って、全く歩けないのでタクシーを呼んでくれということになった3人のランナーも、この最後の6時間台のゴールである。この人たちは明日まともに出勤することは難しいだろう。それでも完走したということになるのかもしれないが、そこまでして「歩いて」ゴールすることにどれだけ意味があるのか。明らかに体を痛めている。
仮にキロ8分という亀さんのようなスローペースのジョギングで42.195kmを走ったって、6時間以内にはフィニッシュできる。だから6時間台の人の多くは相当部分を歩いてしまっていると推測される。
そこでいっそのことフィニッシュ制限時間を6時間にした方がいいと思う。これにより明らかに練習不足の選手は、体に申告のダメージが残る前の段階で収容できる。その方が本人のためにもいいのではないか。完走できなければ、なにくそというわけで翌年はもっと練習して臨んでくれるかもしれない。
若いのに情けないアナウンサーや、でぶちんタレントが6時間台でゴールしているのを日本テレビは芸能番組として延々と長時間放映していたが、マラソンをショー化して冒涜しているような不快感さえ感じた。やはり練習しないとだめでした、とあのアナウンサーたちには言わせたい。なのでやはり制限時間をせめて6時間にすべきではなかろうか。
ニューヨークシティーやロンドンなどの海外メジャーマラソンも制限は7時間以上だというが、6時間台の日本人はなにかメッセージを発信しながら、あるいは笑顔を振りまきながらあえて遅いことを楽しんでいるというよりは、悲壮な顔をして脚をひきずっているという傾向があるように思う。だから海外と同じにすべきだというのもあたらない。
これは、競技マラソンというものになおも思い入れのあるランナーの一人としての意見である。もっとも、今年抽選に漏れて走れなかった僻みも入っているかもしれないが。
ただ、外勤先のナース(普段は時間さえあれば走りに行こうとする私を変人扱いしてきた)が、にしおかすみこがすたすた走りきったのを見て、来年は私もエントリーしたいと言い出したに驚いて、また、新書「東京マラソン」にいかに警察と折衝して7時間制限を勝ち取ったかを読んで、これまでランニングと縁のなかった人にもとっつきやすくするには7時間制限もいいのかと少々ぐらついてきているところではある。
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